層の準同型があるとストークからストークへの準同型が自然に定義できるけど、それは局所的な写像を飛ばした先の写像の局所的な様子から決まるということを言っている。
もっともらしいことをきちんと示すタイプの演習問題。
- である の開近傍 があって
を満たすものが存在する。
は層の準同型なので、右辺はと等しく、左辺はと等しい。
上の議論は反対向きに辿れるので、示された。
CFAの勉強をしているとぶち当たるのがIFRSとUSGAAPの差異についてである。
こちらのブログでもCFAは「IFRSとUS GAAPの会計基準の細かい違いについて丸暗記しなければいけないテスト」と言われており、確かにLevel1の時点でそれなりに苦しい思いをした(特に棚卸資産の評価損周りの取扱いは本当に細かくて辟易した)。
一方で、どこまで丸暗記なのかというところについては議論の余地があると思う。
自分はゴリゴリの理系出身で暗記は大嫌い、社会人になる直前に会計を軽く勉強した際にも暗記アレルギーを発症していたものだけれど、ひょんなことから会計士試験(J)の勉強をすることになり、徐々に会計論もそれなりに有機的な理論体系があるのだなと思ったことがある。
ましてやJ-GAAPより演繹的とされるIFRSであれば、何か共通するエッセンスのようなものを掴めるのではないだろうかと思っている(なおUS-GAAPは……笑)。
そんな仰々しいことはどうでもいいとして、各論的でもいいので学んだことを残しておければと思ったので書いてみる。というわけでまずはのれん。
のれんのGAAP差異について毎回話に出てくるのは償却の有無と減損の2点であるが、個人的にはそれらだけではなく一部のれん(買入のれん)か全部のれんかも重要なポイントではないかと思っている。
IFRSでは減損にかかる会計基準(IAS第36号)*1がまとめられており、そこの中でのれんの減損の扱いも記載されている。固定資産について減損の戻し入れを基本的に認めているのがIFRSの特徴だが、それでものれんについてはJ-GAAPと同様減損の戻し入れはできないルールとなっているのが印象的だった。
はっきりしたことは分からないけれど、のれん減損の戻し入れを許さないのは、戻し入れが発生する場合回収可能価額が引きあがったということであり、当然それは買収後の(買手の)企業努力によって実現されたわけなので自己創設のれんとみなされるからだろうか(でもそうすると全部のれん方式を許容していることとの整合性が崩れるので、間違っているかも)。
全然関係ないけれど、IFRSの良いところとして基準内の論理一貫性があることが挙げられる(概念的フレームワーク=CFWを起点とする”演繹的”アプローチにより設計されているからとされている)。その点では、上記のように裁量がある論点についてはIASBとしては(どうでもいいとまでは言わずとも)CFWから論理的に帰結することができない(CFWを”公理”と思ったときに”証明”も”反証”もできない)ということになるのだろう。もっとも上記の政治的な背景によりそうなったケースも多くあるだろうけれど。
原文は面倒くさくて見ていないが、減損のプロセスは2年前位に改正があったらしい。
ところで全部のれん方式の場合、非支配株主持分の公正価値を算出する必要があるが、これは必ずしも親会社の取得価額からpro-rataで計算されるものでもないらしい。*2
元々企業を買収する際の対価には「支配権プレミアム」が上乗せされているという考え方がある。株価というのはあくまで一般株主(≒非支配株主)にとっての株式価値であり、支配株主であればより直接的に経営に口を出せたり、一般株主がアクセスできない内部情報を見ることだって可能となる。そのため、TOBが良い例であるが、企業買収の際には株価よりも高い価額で取引されることが多い*3。したがってpro-rata計算では支配権プレミアムが含まれてしまうため不適切ということになる。
例えば、時価総額250、資産簿価500(時価600)、負債簿価400(時価400)の会社の80%持分を300で取得するケースを考えてみる。この時親会社持分の公正価値は取得価格である300ということになるが、非支配株主持分の公正価値については機械的にpro-rataで300*20%/80%=75、と算出してしまうと上記の支配権プレミアムが含まれてしまうので、例えば時価総額250*20%=50としたり、何らかの方法で算出した額を使用したりするのだろうか。
支配権付の株式価値というのはM&Aでは当たり前のように計算されているが、非上場会社における支配権無の株式価値というのはどうやって算出するのか気になる(上場していれば上記のように株価を使うのが尤もらしいが……)。DCF法だと別途事業計画を引かなくてはならないので、Trading Multiple法くらいしかないのではないかと素朴に思った。
全部のれん方式がJ-GAAPでは認められていない理由の1つとして自己創設のれんを認めることになるから、というものがある*4*5が、上で述べた通り非支配株主持分の公正価値の算出方法として自然なものが存在しないために比較可能性を害するおそれがあるから、というのも別の理由となるのかもしれない。
また、全部のれん方式においてのれんを償却する場合、非支配持分に係るのれんの償却額は非支配株主持分から引くことになるのだろうか。例えばのれん償却額が100でうち親会社帰属分が70だった場合、仕訳としては
となるイメージである。結構影響が大きそうな割に調べても見つからなかった。まぁUS-GAAP適用の非公開企業でしか論点にはならないが……。
最後に、上記の内容はこの本を参考にしている。詳細を知りたい場合は読んでみると良いかもしれない。
*1:IAS 36 – 2021 Issued IFRS Standards (Part A)
*2:M&A会計 日本基準と国際会計基準との主な相違 第1回|サービス:M&A|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
*3:もっともTOBの場合、株価よりも高い価額でないと応募してくれないから、というのが大きい。別のケースとして、大株主から取得する場合は一般株主からの応募を避けるためにディスカウントTOBをすることもあり、こういう場合はもはや対価のうちどこが支配権プレミアムかという議論は意味がなくなる。
*4:https://www.rieb.kobe-u.ac.jp/old_path/academic/ra/seminar/2012/seminar-details/201302231300-2.pdf